マグネット ・オブ・フォー

 

1章・エピローグ

7・「血の雨」

真澄がリングに上がり、霧島と亜沙美はリングサイドの下でセコンドを引き受ける事になった。
真澄はトントンと軽く跳ねながら自分のリズムに入っていこうとしている。
カーン
ゴングの音とともに、観客からの声の大きさが最大になる。
相手選手の響子は締まった筋肉質な体で、髪型はショート、見るからに強いぞというオーラが出ている、亜沙美は
そのオーラを感じたのか、なかなか前へ出れない。
「真澄ー!やばいって!追い込まれたらやばいって!」霧島が叫ぶが、あっという間に真澄はコーナーポストへ後ず
さりして追い込まれてしまった。
バン!バン!
強烈なフックをブロッキングするが、その度に真澄の体がよろけてしまう。
バン!
(こいつ、何てバカ力、)
ズボッ!
真澄に強烈なボディーブローがめり込む。
「うっ!」亜沙美の耳に真澄の苦悶する声が聞こえた。
ドシュッ!
さらにボディ。「べっ!」と声が聞こえて、ベシャッと唾液がはじけて亜沙美の目の前にマウスピースが落下して来た。
真っ白いマウスピースはシリコン製で、唾液で綺麗に光っている。誰に言われるともなく、亜沙美はそのマウスピースを
さっと拾った。 手に温もりとヌルヌルした感じがあり、あの真澄の口に入ってたものだなと思って少し罪悪感を感じて
すぐに霧島に渡そうとするが、
  「それ洗っといて、次のラウンドですぐいるから」と付き返された。
リングの上を見ると、真澄はやっとロープ際の地獄から抜け出して、二人はリングの中央で攻防を繰り返していた。
  「それがさ、ちょっとこの試合やばいかもね。」霧島が親指のつめを噛んで言った。
亜沙美には互角の攻防に見えるが、 響子のパンチは的確にヒットし、真澄のパンチは当たっているようで全てブロック
されている。しばらくすると真澄の顔が腫れてきたので、ああ負けているんだとやっと分かった。
しばらく攻防が続き、やがてゴングが鳴った。
 たった1ラウンドで真澄は足にきていた、フラフラしながら椅子に座る。
「やばいかも。」一言だけ不安そうにつぶやく真澄。
黙っておそるおそる亜沙美はマウスピースを差し出した、それを亜沙美がくわえる、その瞬間に真澄の口の中の生暖
かさを感じ、ますます不思議な気分になった。
  インターバルでほっとしている間、亜沙美はまわりを見渡すが、どう見ても金持ちだろうというスーツを着こなした人、
会社の重役かなと思える人がたくさん座っていた。
  カーンとゴングが鳴る、今度はゴングとともに真澄が前へ前へ出る。
「やばいなぁ、完全に浮き足立っちゃってるよ。」霧島はまたもや不安そうだ。だが亜沙美にはさっぱり分からなかった。
ブロックしている上からパンチが当たるのを見ても当たってダメージを与えているようにしか見えないのだ。
「大丈夫でしょー、どんどん打ってパンチも当たってるし・・・」亜沙美が言ったが、霧島に無視をされた。

ガッ!

大降りのフックが真澄に当たって、唾液の塊が亜沙美の顔に飛んできた。いそいでこすって落とそうとするが、こすれば
こするほど唾液の匂いがきつくなって少し嫌になった。

ドガッ!

今度は遂に真澄のフックが響子の頬にヒットした。口からマウスピースがはみ出る。
もう一発今度は逆のフックを打つが、スウェイバックでかわされて強烈なストレートが真澄に炸裂!真澄は少しフラッとし
たがすぐに体制を立て直して雨のように降ってくるパンチをブロックする。2Rが始まったばかりなのにもう方でふうふう息
をしている。
「もうスタミナ切れっていうか、相手のペースに飲まれちゃったよー」誰も聞いていないのに霧島は独り言を言う、何か言った
方がいいかな、と亜沙美は思ったが、どうせ無視されるだろうと何も言わなかった。
しかし蒸し暑い、物凄い熱気だ、選手がパンチを出そうと出すまいと物凄い歓声やヤジが飛び交う。
何故ここにいるのか分からない、人生が急激に変わるような予感のする亜沙美だった。


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