マグネット ・オブ・フォー

 

1章・エピローグ

6・「負け」

 (うわー、どうしよう、どうしよう、どうしよう・・・。)痙攣する真澄を見て亜沙美はパニックになった。自分のパンチで
まさかこんなになるとは夢にも思わなかった。
  「おーい、真澄ちゃん、素人のパンチ一発でおねんね?」 霧島はあきれたように言う、人を何だと思ってるんだ、と
亜沙美は腹が立ったが、真澄が起き上がってくると怖いので黙っていた。
  「おーい、真澄ちゃーん、立たないと負けになっちゃうよ。立たないと亜沙美ちゃんを試合に出しちゃうよー。」
その声に反応するように真澄がむっくりと上半身を起こす。目が本気になって亜沙美をにらみつける。
「あ、いや、あの、痛かった?ごめんねー。」真澄に笑いかけるが、もう冗談ではすまない。ゆっくりと起き上がる真澄。
そしてファイティングポーズ、亜沙美の足がブルブル震える。

ゴッ

 

(‥‥‥‥。あれ。)意識が戻った、いつの間にか自分の家の布団に寝ている。夢かうつつかうつつか夢か。
「いつつ・・・」 顔に絆創膏が数枚張り付いており、晴れ上がって痛い。
ゆっくり布団から起き上がる、まぎれもなく自分の部屋だ。
(やっぱり負けたんだ・・・・)
「お母さーん。」ふすまを開けてお茶の間へ入った。
「霧島・・・さん?」
何と、母と霧島が仲良さそうに話していた。
「よーっ!亜沙美ちゃん、今日のギャラ持ってきたから。」
「ギャラって何ですかぁ?」
「えとね、真澄ちゃんとの試合をビデオにとらせてもらってたから、ギャラ持ってきた。売れに売れてさー。」
そこで亜沙美は、何故あんなに倒れても試合をさせられたのかが分かった。
「20万もらったよ、あんた、この業界に入りなさい。反対しないよ。」母親が言う。
「ボクシングはしないって・・・もうあんなに殴られるのごめんだよぉ。」
「あら、じゃあ殴られなければいいじゃない?特訓してあげるよ。」霧島がニコニコ顔で言う、きっと20万なんて問題無い
位にお金が入ったから上機嫌なんだな、と亜沙美は思った。
「霧島さん、もうイヤだよぉ、勘弁してよぉ。」
「うん、まあ無理にとはいわないわ、とりあえず一週間後に真澄ちゃんの試合があるんだよね、見に来たらいいよ、関係者
はタダで入れるからいっしょにいこう、これも無理にとは言わない、迎えに来るから考えといて。じゃあお母さん、お邪魔し
ましたね。」霧島が立ち上がって玄関へ歩く。その途中振り返って
「あなたは練習したらチャンピオンになれるかもね、パンチが当たってどうだった?」そう言って返事を聞く間もなく出て行った。

 

7・「悩み悩んで」

霧島の言ったとおり、次の日も、また次の日もボクシングの事、いや、人を始めて殴ったことが忘れられなかった。
喧嘩なんてした事がない、しかもあの自分をいじめていた真澄に強烈なフック。
ボクシング・・・ボクシング・・・ボクシング・・・だけど裏世界のボクシング。
本当のボクシングをやる?でもお金は入らないかもしれない。
悩む、痛いのはイヤだけど、あの殴ったことは忘れられない・・・

8・「試合の朝」

「こーんにちはー」霧島が家のドアをあけて入ってきた。
「ああ、いらっしゃい」と応対する母の声、しょうがない。見に行くだけ見に行くか、そう考えて亜沙美はふすまを開けた。
「見るだけでいいですか・・・まだ決めてないんだけ・・・」そう言いかけると霧島は亜沙美の手をとって無理やり外へつれて
出た。
「もう試合始まっちゃうからとりあえず車に乗って!」

バタン、後部座席に乗る。「よっ」相変わらず元気な真澄の挨拶、この前の試合の怒った顔を思い出すと、亜沙美のお尻の
穴はキュッと締まるのだった。
「お、おはよう、この前はどうも・・・」
「今日の試合の奴を倒したら一発でチャンピオンになれるんだよ!ちゃんと見ときなよ!」
「う・・・うん、チャンピオンになっちゃうんだ。」
「なるなる、勝てる自信あるしね。」
三人の乗ったBMWは物凄い勢いで走る。

9・「試合会場にて」

車は古いビルにとまる、五階建てのようだが、ガラスが割れて廃墟のようにとても汚い。
人は誰もおらず、本当にここで試合が行われるのだろうかと亜沙美は首をかしげる。
その間にも霧島と亜沙美はどんどん歩いていく、その後を突いていくと石壁に取っ手が付いている、それを引っ張ると
ゴゴゴと音がしてそこが開いた瞬間、物凄い歓声がどっと漏れてきた。
三人が中に入ると、サングラスをかけたスーツの男が急いでドアを閉めて、またそこは密室となった。
まるで亜沙美にとって夢の中のようだった、想像以上に会場は広く、テレビで見るプロレス会場と同じくらいの大きさがあり、
ミラーボールが揺れて目がチカチカする。
  更衣室は無いようで、その場で真澄は着替えだすが、裸になった瞬間にお札が飛び交い、それを霧島が必死で集めて
いた。
「それではお待たせ致しました! チャンピオン福島響子と佐々木真澄の試合を始めます!
真澄はトップレス姿に青いグローブ、白いトランクスに青いブーツ姿になっている。胸を出しているにもかかわらず、格好い
いなと亜沙美は思った。

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